砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet(桜庭一樹)[富士見ミステリー文庫]

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

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きっと僕も、一生忘れない。嘘つきで泣き虫で悲しいほど優しい『汚染された人魚』こと海野藻屑― 彼女が必死に撃ち続けた「弾丸」の数々を。起きてしまった事件のことを。
大人になんてなりたくなかった。傲慢で、自分勝手な理屈を振りかざして、くだらない言い訳を繰り返す。そして、見え透いた安い論理で子供を丸め込もうとする。でも、早く大人になりたかった。自分はあまりにも弱く、みじめで戦う手段を持たなかった。このままでは、この小さな町で息が詰まって死んでしまうと分かっていた。どこにも、行く場所がなく、そしてどこかへ逃げたいと思っていた。そんな13歳の二人の少女が出会った。山田なぎさ―片田舎に暮らし、早く卒業し、社会に出たいと思っているリアリスト。海野藻屑―自分ことを人魚だと言い張る少し不思議な転校生の女の子。二人は言葉を交わして、ともに同じ空気を吸い、思いをはせる。全ては生きるために、生き残っていくために―。これは、そんな二人の小さな物語。渾身の青春暗黒ミステリー!

かなりキました……読んでてこれほど生々しくて、気持ち悪くて、でも共感するとこもあって、冒頭でわかってたはずの結末に鬱にさせられました。

昨今、歪んだ少年少女の凶行・無気力ぶりがよくクローズアップされていますが、その手の問題に関心のある人はこの小説を読んで欲しいですね。
もちろん、この作品に描かれた人物は創作であり、極端な描写もありますし、この作品を通して描かれた思想、見方が100%正しいとは思いませんが、ある主の子供たち側の真実も生々しく描かれている傑作……いや、怪作だと思います。

私は幸いと言うべきか、比較的恵まれた家庭に生まれ育ち、彼女たちのような日常の困難は経験してないかもしれません。
しかし、日常において「いい子」であろうとする主人公・山田なぎさの思考には、至るところで共感しました。
共感するとこが主に苦しさ、嫌悪する部分ってのが痛いんですけどね(^^;


事件が起きる度に周囲の人はカメラに向かって大人はこう言います。
「まさか」と。
連日、ニュース等で事件は日々伝えられています。
でも、それを見ている人の何人の人が、自分の周囲でも起きるかもしれない、と真剣に考えているでしょうか。
子供が歪む、と言いますが、歪ませているのは私は「無関心」さだと思います。
自分の事に精一杯で、周囲の人はもちろん、自分の子供にすら関心を払えない大人たち。
そんな大人になれない大人の社会に生きる無力な“弾丸”を持てない子供たちはどう生きていくのか? あるいは……死ぬのか。

一つの悲劇が、ここにあります。